ローズウッド爺さんとわたし。
本日のコンサートで演奏するピアノの内臓。高木裕さん著「今のピアノでショパンは弾けない」の中に、このピアノの華やかな物語が記されている。歴代の名だたるピアニストが、カーネギーホールやメトロポリタンホールで愛用したスター中のスター。高木さんは本の中で、親しみを込めてローズウッド爺さんと呼んでいる。
わたしも昨日のリハから、気付くとローズウッド爺さん・・と話し掛けていた。爺さんは最初出会った時、それは優しく包んでくれた。たまらなくデリケート。でもリハを重ねてわかった。とんでもなく変り者。頑固者でもあるのだった。
あ〜全然言うことを聞いてくれないww半ば諦めて弾きはじめると、そうだ。そうだよそれでいいんだ・・全てを赦してくれたような甘やかで枯れた響きに浸かりうっとり蜜月へ。
今までピアノは安心感で選んできた。高木さんと出会ってピアノは安心感だけではなくどこか空恐ろしい、デモニーッシュな快感を伴って選ぶようになった。弾きながらどんどんクエスチョンマークが点灯する。ある瞬間全否定される。でもまたそこから肯定へ・・つまり「おまえはダメだ」から「おまえはかなりイイ。いやほんとイイ。このワシが言うんだから聞いておけ・・」このドラマティックな落差、甘い囁きがたまらない。その瞬間、多分どんな魅惑的な恋人より、ピアノであるローズウッド爺さんは私に近い。
さて、今日はどんな物語が生まれるかな。ローズウッド爺さんとわたしが皆さんを巻き込んで繰り広げる旅を精一杯愉しんでこよう。
by aricohibinoawa
| 2013-12-06 02:07